市長の手控え帖 No.44 「大正百年と大阪」

市長の手控え帖

 

大震災から一年、犠牲者の追悼式が行われました。依然、苦難は続いていますが、復興の確かな一歩を刻むのはこれからです。双葉地方は将来の姿を描けず苦悩し、中間貯蔵施設の場所も確定できない。これが原因で、土砂の仮置場も決まらず、除染も進まない状況にあります。なんとか住民のご理解を得て仮置場を整備し、市内の除染を進めていきたいと思います。さらに大事なことは働く場をつくること。三菱ガス化学の用地造成が始まりました。これに続く企業の誘致や地元企業・農業への支援を通して、雇用の増加を目指します。

今年は、明治天皇が明治45年7月29日崩御され、大正と改元して100年です。大正は15年にも満たない短い御世でした。維新の大業を経て、近代国家建設という目標に向かって走りぬけた明治。世界的恐慌と戦争に翻弄され破局へ向かう昭和。大正は、二つの怒涛の時代の狭間にあっていまひとつ印象が少ない。

しかし、よく眺めると、政治的にも文化的にも大きい意味を持っている。日清・日露の戦いを制し「一等国」となった自信と驕慢が同居。新聞の拡張とラジオの誕生による大衆社会の到来。貧富の差と社会主義の登場。女性の存在感の高まり。明治という「重し」が取れ、伸びやかな、しかしどこか軽佻な雰囲気。都市化が急速に進み、学歴を持つ「サラリーマン」という職層が生まれた。電車を利用し、新聞・雑誌を読み、映画・レコードを楽しむ。同時に民主・自由を求める大正デモクラシーが花咲く。これは大衆が自らの意思を示し、国を動かす時代の始まりでもありました。

橋下大阪市長が脚光を浴びている。小気味よい語り口。絶妙な言い回しで問題を提起。意識的に敵をつくり闘う姿勢。「うまい」と感心する。府と市の二重行政を排しムダをなくすために統合する、との主張は腑にストンと落ちる。法律の改正を伴うことから、国政にも進出するとのこと。事は簡単に運ぶとは思えないが、見事な役者振り。真の改革者かどうかこれから真価を問われます。今、大阪が面白い。難波の地は古くから京都・奈良と結ばれ、外に開かれた経済のまち。鉄砲を扱い財をなした大商人が、茶の湯を高め一流の文化人の顔も持つ。旺盛な事業欲と自由な精神は政治権力を嫌う。当然のごとく信長・家康は人気がない。例外は大阪を大きくした太閤さん。大らかな気風は進取に富む経済人を生む。

阪急電鉄を興した小林一三という事業家がいた。大都市では急速な工業化により、新たな職業と価値観を持つ中産階級が生まれようとしていた。これを小林は見逃さなかった。工場の立ち並ぶ中心地から郊外へ路線を伸ばす。沿線に住宅地を造成し分譲する。サラリーマンはこれをローンで買い、電車で都心に通う。ターミナルにはデパートをつくる。鉄道を起点として、都市開発と流通事業を一体的に行い相乗効果をあげるという卓抜した構想。時代を見抜く眼力と実行力で、その後の私鉄の経営モデルをつくった企業家魂には驚かされる。大正時代には、阪急のほか南海・阪神・京阪・近鉄の五社があり、競いあっていた。大阪は「私鉄のまち」でした。

もうひとつは文化の力に着目したこと。小林は宝塚に「誰でも楽しめる健全な国民劇」を目指し劇団をつくった。しかも少女だけの劇という奇抜さ。ここは実力と努力でしかトップスターになれない厳しい世界。鍛えられた演技と歌唱力、あでやかな衣裳で夢の世界へ引き寄せる。「すみれの花が咲く頃」の舞台から、越路吹雪・乙羽信子・天海祐希・檀れい、ら多くのスターが生まれている。宝塚歌劇は小林の最大の遺産かもしれない。

阪急に対抗するように、阪神が甲子園球場をつくり、全国中等野球のメッカにしたのも大正。今や故郷と母校の栄誉をかけ国民が熱狂する。宝塚や中等野球の新しい文化は、大正という時代に、大阪の私鉄沿線で生まれた。そしてこれを支えたのは大阪毎日と大阪朝日。共に100万部という驚異的な部数を有し、やがて東京へ進出、全国紙となった。大阪は「新聞のまち」でもあった。大正末には、大阪市の人口が東京市を上回った。「民の都」大阪は大正時代最も光り輝いていた。しかし、昭和に入り恐慌と軍靴の響きとともに、「帝の都」東京の存在が大きくなった。

戦後は東京に全てが集中するいびつな姿となり、地方の活力が失われていった。しかし関西では、かつての栄光を取り戻す動きが始まっている。これが、地下水脈を通して地方復権のうねりになるかもしれない。白河もこれに備えなければなりません。

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