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市長の手控え帖 No.49 「カランコロンと歩く人」

市長の手控え帖

暑い夏でした。史上最高の36度を記録するなど、30度を超える日が続いた。白河にも温暖化の影響が出てきたようです。ロンドン五輪が、多くの感動とともに幕を閉じた。日本人の活躍に、深夜までテレビの前で応援。眠い目をこすり仕事につく日々。震災後、心の晴れない中、久し振りに夢中になることができた。

開会式では、私達の世代には嬉しい趣向が凝らされていた。美しい田園風景が映し出され、「007」の音楽にのり、ジェームズ・ボンドがパラシュートで飛び降りる。結びに、ポール・マッカートニーが現われ、ビートルズの「ヘイ・ジュード」が流れた。悩み苦しむ人を励ますこの曲が、式典で歌われた意味は深い。「英国最大の輸出品はビートルズ」と言われるが、世界最高のスポーツイベントにふさわしい、心憎い演出だった。

秋がコスモスとともにしのび寄ってきた。淡いピンクの優しげな風情。草原一面に広がるのもよし。道の端にはかなげに揺れるのも、線路沿いにひそやかに咲くのもよし。山口百恵の秋桜。「淡紅の秋桜が秋の日の 何気ない陽溜まりに揺れている」。狩人のコスモス街道。「右は越後へ行く北の道 左は木曽まで行く中山道 続いてるコスモスの道が」。哀愁・恋・別れをコスモスが演出し、詩になる。

この季節は旅心を誘う。名もないまちの小さな駅に降り、秋風に吹かれ、そぞろ歩く。コスモスがさりげなく出迎え、旅情を満たしてくれる。

突然、山下清を思い出す。お馴染の浴衣にリュック、下駄でコスモスの揺れる田舎道や線路を歩く。今年は生誕90年。戦前から戦後の貧しい時代、日本列島を北へ南へ。三度の飯を乞いながら、途方もない距離を歩き回った。鉄道・花火・温泉が大好き。旅先での風景を頭に刻み、戻ってから吐き出すように絵に仕上げ、日記にあらわした。「日本のゴッホ」「裸の大将」とも呼ばれ、映画やドラマ化された。

清は知的障がいを持ち、自立施設の八幡学園に入る。「踏むな 育てよ 水そそげ」と個性を尊重し、伸び伸び育てる教育。貼絵の才能を見抜き、愛情と細やかな心配りで接した学園の存在は大きい。

学園はオアシス。でも、外の世界をもっと見たい。「片雲の風に誘われて 漂泊の思いやまず」か、学園を抜け出しては放浪の旅を繰り返す。放浪といっても行き先は決める。金がないから歩く。目的地へ確実に、しかも最短で行くには線路がいいと考える。駅なら夜露をしのげる。水もトイレもある。顔を洗い洗濯もできる。清の放浪は、鉄道と駅に支えられた。

よく歩いたのは近くを走る常磐線。柏・我孫子・取手はなじみのまち。さらに北上し、いわきから郡山へ。「郡山は大きな町だから キャンデーが沢山あるので 三軒目のキャンデー屋に貰いにいって やっとキャンデーを貰えた」と日記に印す。東北線を南下し、大宮から高崎・草津へ。名湯で身体を休める。困ったのはトンネル。暗く淋しいうえに列車がきたら大変。頭を働かせ、列車の通った直後にくぐる。トンネルの印象は強かったらしい。

宿は、日数は、経費は。計画を立てないと不安な私達には、おとぎ話のようだ。旅をしながら、三食にあずかりお金を戴く。歩くを基本に、汽車にも乗れた。こんなことができたのは、日本人に、門付け者へ一汁一飯をほどこす心が息づいていたから。巡礼者には報謝、伊勢参詣者には施行、貧窮者には喜捨。清の放浪は、日本の豊かな伝統的生活文化に支えられていた。といっても、そう簡単に情を受けられる訳ではない。時に天涯孤独と、偽りの身の上話で哀れを誘い、警察の不審尋問にもこの手を使って事なきをえたらしい。旅を続け、身を守るためのかわいい嘘。

はたして今、足の向くままの無銭旅行ができるでしょうか。気味が悪いとインターフォン越しに追い返される。駅にも泊まれない。下手をすれば、ホームレス狩りに遭う。当時とは、比較にならないほど物的豊かさを得たものの、気ぜわしくとげとげしい今の社会では難しい。

四国遍路は、今なお健在で、多くの悩める人が苦行の道を行く。前首相も責任を感じてかどうか、菅笠と金剛杖に身をやつした。誰もが、窮屈な社会に身も心も縮まっている。その点、山下清は、ずっこけながら、丸裸の心で国中をたっぷり時間をかけ遍路してのけた。ちまちまとした世間の常識を飛び越え、悠然と、カランコロンと歩いた人でした。

「いい所へ行こうとしなければ しぜんにいい所へぶつかる いい所へ行こうとするから いい所へぶつからないんだろう」。放浪日記より。

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