市長の手控え帖 No.79 「もてなしの心」

市長の手控え帖

大震災から4年が過ぎ、今年も桜の季節を迎えた。痛ましい犠牲のあった葉ノ木平には、災害住宅が建設され、294号バイパスも用地の取得に全力をあげている。文化交流館は骨組みが見えてきた。三菱ガス化学の第1期工事は7月にも始まる。文化・産業・道路等、未来の礎となる大型事業が進む。今後、除染を急ピッチで行い、風評の克服に全力をあげたい。しかし風評は厄介なもので理で説いても解決は難しい。鍵になるのは観光やスポーツのイベントによる交流。

今月から6月まで、本県の魅力を発信する観光キャンペーンが始まった。県南では、新幹線とゴルフ場をセットにしたプランの売り込みや、旅行業者を招き小峰城、南湖などの歴史・文化に触れてもらう取り組みを行うなど昨年からこれに備えてきた。2月初旬、関連団体が一堂に会して、決起大会を行った。観光にはもてなしの心が欠かせない。

そこで日本橋高島屋のコンシェルジュ、敷田正法さんに講演をお願いした。題は「気遣い力」。氏は大学の先輩で下宿も同じ。三畳間で酒を飲み、麻雀も教えてもらった。共に下駄をならし横丁の銭湯へ。一番風呂の気分は格別だった。

コンシェルジュは、もともとホテルで宿泊客の相談や要望にこたえる、よろず承り役。先輩は百貨店における先駆者といわれる。花形の営業から転身して15年。初めは戸惑ったが、自分に向いていると秘かに情熱を燃やす。増える外国人にも、米国で鍛えた英語や、仕事の合間に学んだ中国・韓国語で対応。日本橋界隈を知るのも仕事のうちと、中央区の観光検定試験に挑戦。銀座・京橋・築地・佃。再開発後の街路や、江戸情緒の残るまち並みを歩き、歴史・由来をひとつひとつ確認する。今、観光特派員の肩書きを持つ区のコンシェルジュでもある。

気遣いとは「お客様が満足し、また足を運んで頂く」ために最大限心を砕くこと。「三越はどちら?」とライバル店の道を聞かれても、外に出て夏なら日陰を、冬なら日向を歩けるよう、また、晴れか雨かに応じ道順を案内するという。恐れいりました。三つの禁句がある。“ありません”は会話を終わらせてしまう。代替えの品を提供するよう努める。“できません”は期待を裏切ってしまう。極力こたえられるよう努める。“知りません”は夢を壊してしまう。あらゆるツールを使い調べる。NOと言わない接遇が、人間力や仕事力を高めるという。なるほど。

苦情への対応も大事。批判されるのはいやなもの。しかし避けてばかりいると、成長や改善の機会を逃すことになる。苦情は成長の糧と、一歩進み出て聞く気構えが必要。普通の行為に少し配慮や工夫を加えれば、並はずれた成果になると説く。おおらかで何事にも前向きな九州人。今は天職と心得、高島屋の顔となっている。

高島屋は1831年京都での呉服商が始まり。屋号は近江の国・高島に由来する。近江商人といえば「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よし。売り手の都合だけではなく、買い手が満足し、商いを通して地域社会に貢献する。強欲は一炊の夢と肝に銘ずる。信用を第一とする。顧客を平等に遇する。幕末の蛤御門の変で京都は火の海。焼け出された人に安値で商品を提供した。70年前の東京大空襲。多くの人が日本橋店に避難し助かった。4年前の大震災。帰宅困難者に店を開放し、水や食料品を用意した。「もてなし」の精神が脈々と流れている。

何故近江か。楽市楽座は規制を緩め、経済活動を促した。近江は京・大阪に近く、水運に恵まれ、北国・中山・東海の街道が伸びている。自然にベンチャーの心が育まれた。全国に足を運び各地に支店をつくる。年末には一斉に戻り情勢を報告。会津はこれが売れ筋、盛岡は何々が足らない。素早く品物を仕入れる。各藩の経済や文化、政治状況を把握できた。近江から日本が見えていた。ちなみに福島中合の創業者も近江の人、中村治郎兵衛。中村合名会社「中合」を興す。情報と進取の心の大事さは、時を超えて不変である。

日本橋高島屋は国の重要文化財に指定されている。和と洋の見事な組み合わせは、高度な建築技術を誇る。一階ロビーは吹き抜けで、高い天井と大理石の空間は劇場か美術館のよう。非日常の興奮とときめきを覚える。扉を開けると、大きく丸い身体に、にこやかな笑顔の名物コンシェルジュが迎えてくれる。

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