1. ホーム>
  2. 市政情報>
  3. 市長室へようこそ>
  4. 市長の手控え帖>
  5. バックナンバー>
  6. 平成31年度(No122~)>
  7. 市長の手控え帖 No.122 「統計の意味するもの」

市長の手控え帖 No.122 「統計の意味するもの」

市長の手控え帳

 

 賃金や労働時間の変動を示し、景気動向の判断指標となる毎月勤労統計で、長年不正な方法による調査が行われていたことが判明した。意図的か手抜きかは分からないが、由々しきことだ。
 
 統計は社会・経済を映す鏡であり、政策立案の基礎となる極めて重要な資料。戦前の反省から「統計推進国」まで高まった信用を崩す恐れもある。統計は過去を検証し、今の姿を見つめ、未来を切り拓くための国民共有の財産。「公共財」であることを再認識すべきである。
 
 明治初期。近代国家へ邁進する日本で、統計の重要性を力説したのは大隈重信だった。統計への理解が、いまだ十分でない時代に、「羅針盤を持たずに航海はできない」と権限と実行力を備えた統計院を創設し、自ら院長になる。今なら国務大臣兼統計院長というところか。
 
 大隈は日本の現状を正確な数値で表す統計も、議会・法律・教育制度の導入と同様、近代国家の証明であることを誰よりも心得ていた。「大風呂敷」と揶揄されたが、首相や大蔵卿も務め、財政や統計に通じた一流の政治家だった。
 
 近代看護の母、ナイチンゲールは優秀な統計学者でもあった。1854年、ロシアとトルコが争ったクリミア戦争に英国が参戦。彼女は従軍看護婦のリーダーとして派遣された。そこで目にしたのは、戦闘による死者よりも、劣悪な衛生環境で亡くなる兵士の方が多い実態だった。
 
 彼女は、統計学を駆使し死因を分析。数字に弱い人でも理解しやすいように、円グラフにし、ひと目で分かるようにした。この報告書が契機となり、野戦病院の衛生状態が格段に改善され、死亡率は劇的に低下した。「天使とは美しい花を振りまく者でなく、苦悩する者のために戦う者である」。白衣の天使は、統計の母としても尊敬されている。
 
 ときに統計はねじ曲げられる。数字を見れば、勝つ公算のない戦争に入ったり、戦果を異常に膨らませたり…。吉田茂は「戦時中から、とかく政府は故意に無意識に、好都合の数字のみを発表していた」と回想する。敗戦後、日本は食糧難に苦しむ。吉田はGHQに、450万トンの食糧を要請。実際の支給は70万トン。これでも餓死者は出なかった。

 "450万トンとは、どんな統計からきたんだ"と気色ばむマッカーサー。吉田は涼しげに"日本の統計が正確だったら、あんな無謀な戦争はしませんよ。したとしても、勝っていたはずです"と。

 戦後すぐ"統計の整備は日本再建の基礎事業中の基礎"と説く、経済学者大内兵衛を委員長に迎え、強い権限を持つ統計委員会を設立。翌年「統計の真実性確保」をうたった統計法が制定された。以後、日本の統計レベルは高くなり、世界の模範とされた。

 しかし最近、統計が軽んじられているように思える。統計に限らず、教育や企業でも、いつ芽が出るか分からない研究開発や社員教育の経費を削り、即戦力を求める。しかし、時代を超えて必要とされる基礎や原則を重んじなければ、本物は生まれない。「すぐ役に立つ人間は、すぐ役に立たなくなる」。慶応大初代工学部長、谷村豊太郎の言葉は重い。

 行政改革の名の下、統計職員は減るばかり。ベテラン職員からの専門知識の継承もうまくいっていない。大学にも専門の学科はない。統計重視の体制をとる欧米に比してお寒い状況だ。AIやIoTなど、データ活用が社会経済を左右する時代になった。より一層正確さを期し、根拠に基づく政策が求められる。

 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。孫子の兵法の一節。相手の実情を知る一方で、自分の力を冷静に分析し、策を練る。軍学書であるが、国や自治体、企業経営にもあてはまる。統計への不信は、日本の将来に警鐘を鳴らしている。

問い合わせ先

このページに関するお問い合わせは秘書広報課です。

本庁舎3階 〒961-8602 福島県白河市八幡小路7-1

電話番号:0248-22-1111 ファックス番号:0248-27-2577

メールでのお問い合わせはこちら

アンケート

白河市ホームページをより良いサイトにするために、皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
なお、この欄からのご意見・ご感想には返信できませんのでご了承ください。

Q.このページはお役に立ちましたか?
スマートフォン用ページで見る