検索
  1. ホーム
  2. 市政情報
  3. 市長室へようこそ
  4. 市長の手控え帖
  5. バックナンバー
  6. 令和5年度(No164~)
  7. 市長の手控え帖 No.167「時代の景色を切り取る名曲」

市政情報

市長の手控え帖 No.167「時代の景色を切り取る名曲」

市長の手控え帳

昨年はユーミンのデビュー50周年。当時は学生運動も収まり、政治の季節から私生活・個人の心情へと移っていた。世はフォークやニューミュージックの全盛期。吉田拓郎の『旅の宿』や、かぐや姫の『神田川』がヒットしていた。そこに異質のミュージシャンが現れた。『ひこうき雲』や『中央フリーウェイ』。都会的なサウンドとメロディ。ビブラートをつけない無機質で不思議なボーカル。

彼女の曲は一幅の絵のよう。一瞬の情景を切り取り、聴き手に景色や心象風景を再現させる。「ソーダ水の中を貨物船がとおる…小さなアワも恋のように消えていく」。また湿り気がない。『ルージュの伝言』や『卒業写真』は、生活感漂う"四畳半フォーク"とは違っている。

曲には死を想う詞が多い。『ひこうき雲』はジブリ映画『風立ちぬ』の主題歌。一見牧歌的だがテーマは死。ちあきなおみの『喝采』は愛した人の死の哀しみを胸に、ステージに立つ心情が伝わる。ユーミンはそれを伝えるのでも、訴えるのでもない。メメントモリ!死を想い、今を真剣に生きる情熱が込められている。

 

フォークのバンバン。デビューから4年経ったがヒット曲がない。ばんばひろふみは最後の一曲に賭けた。頼ったのは荒井由実。「詞も曲もパステルカラー。彼女の曲で売れなければ諦めもつく」。程なくして届けられた曲のタイトルに驚く。「『いちご白書』をもう一度」!いちご白書は、1970年に公開されたコロンビア大学の学生運動を描いた映画。

"いちご"は、大学敷地内への軍事関連施設の建設に反対する学生に「所詮苺が好きか嫌いかという程度の議論だ」との学部長の発言に由来している。占拠した体育館の床を手で叩きながら、ジョン・レノンの『平和を我等に』を歌うシーンは胸に残る。強制排除された学生たちは無力感に打ちひしがれる。

哀調を帯びた曲にのる詞は心にしみる。「僕は無精ヒゲと髪をのばして   学生集会へも時々出かけた…就職が決まって髪をきってきた時   もう若くないさと   君に言い訳したね…」。長髪は若者のささやかな反体制のシンボルだった。

斬新な表現で、日常の情景を写し出し、若者のいくらか屈折した心をすくいとる。人生のモラトリアムである学生時代との別れが印象的。全共闘世代が思い出の引き出しにしまい込むには、まだヒリヒリとした現実感が残る。この曲は、時代の雰囲気を見事なまでに表現している。

 

切なく、ほろ苦い青春の曲が深夜放送から流れると、洪水のようなリクエスト。1975年の売り上げトップになった。5、6年前。世界中で若者の反乱が起きた。大統領が退陣したパリの五月革命、米国のベトナム戦争反対、中国の文化大革命、日本の大学紛争。体制改革、反戦平和が海を越えて燃えあがった。

学費値上げ、旧態依然とした大学の管理体制への抗議から、政治運動へ転化していった。大方の学生も、大学を、社会を変えようと、自分を投げ打つ同世代の姿に、無関心ではいられなかった。渦の中心から離れていたが、集会やデモには参加した。だが活動が過激化し、暴徒化すると国民の目は厳しくなった。

学生も退いた。そして現実を見つめた。イデオロギーでは生きていけない。通過儀礼を終えた若者は髪を切り就職活動へ。ヘルメットに手拭い姿の闘士は、背広姿の企業戦士に変身する。すぐに"24時間戦えますか"の猛烈社員になった。

だが、社会を変革する高揚感に酔った青年たちは、これでいいんだと、言い聞かせながらも心の奥で葛藤していた。この歌は挫折感を抱えた世代の鎮魂歌といえる。ユーミンは自分の歌が"詠み人知らず"として残って欲しいと言う。今日も永遠の普遍性を持つメロディと、時代を超えて心に響く言葉を求め続けている。

問い合わせ先

このページに関するお問い合わせは秘書広報課です。

本庁舎3階 〒961-8602 福島県白河市八幡小路7-1

電話番号:0248-22-1111 ファックス番号:0248-27-2577

メールでのお問い合わせはこちら
スマートフォン用ページで見る