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市長の手控え帖 No.81 「彦根城の幸運」

市長の手控え帖

小峰城の南面石垣と三重櫓が修復された。震災後の無残な姿に多くの市民が涙した。城の復旧は特別な意味を持つ。文化財としての価値も大きいが、何より心のよりどころになっている。4月の桜祭りにあわせ、小峰城の復興式が行われた。前御門から本丸、櫓にかけ人の波が続いた。ぬけるような青空に、白壁と美しい紋様の石垣。祝うかのように爛漫の桜が花をそえる。絵になる光景だった。嬉しさとともに、白河の発展は今日から始まるとの思いを強くした。

今でこそ城郭は文化財との意識は定着しているが、明治維新の頃は薄かった。むしろ封建時代の遺物として敵視された。明治政府の要人は下級武士。城や武士道への愛着は乏しい。明治6年「廃城令」が出された。建造物は壊され、用地は売却されるか軍用地に使用された。

天守閣が創建時のまま残された城は、松本・彦根・姫路・犬山の国宝指定のほか8つにすぎない。世界遺産の姫路城は、白さぎに形容される優美さで魅了する。かつてこの名城も消え去る運命にあったが、取り壊し費用が莫大なことから放置された。辛うじて日本の宝は残った。

戊辰の役で白河と同じく激戦となった越後長岡。この城は徹底的に破壊された。城跡は新幹線の駅となっている。市長さんは白河や会津のように城が残っていたらと、羨ましがる。城はまちの誇りだ。

さて彦根城。京・大阪の備えとして重要な役割を持つ。徳川四天王のひとつ、井伊家35万石の居城。井伊家は武勇を誇る。井伊の「赤備え」といわれ、甲冑・旗指物を朱に染めた軍団は、常に先陣を切る。江戸城内では、会津藩・高松藩とともに「溜の間」詰という最高の待遇を受ける。

また幕閣から重要事項の諮問を受け、儀式の際には老中の上席に座る。老中は通常10万石以下の譜代から就くが、非常の折には大老が置かれる。大老は四家から出る。江戸時代12人が大老を務めたが、うち6人は井伊家の出。まさしく徳川の屋体を支える特別な家柄だ。

琵琶湖畔にそびえるこの名城も、解体されるところだった。陸軍の駐屯地となり、石垣や門が次々に撤去され、天守閣も売却。明治11年10月に、取り壊し用の足場が組まれた。まさしく風前の灯だったが、奇跡がおきた。北陸巡幸から京都に戻る途中の明治天皇が、近くに宿泊。同行していた参議大隈重信が、たまたま城見物に訪れた。解体を知った大隈は「武士の魂の入れ物」の天守閣消失を惜しみ、天皇に保存を奏上。聞き入れられた。彦根城は幸運だった。

8年前、築城400年を迎えた。祭のイメージキャラクターとして登場し、「ゆるキャラ」の火つけ役になったのが“ひこにゃん”。天守閣の下で愛嬌を振りまき、彦根市の観光に大活躍。今月白河で開催される「ご当地キャラこども夢フェスタ」にも可愛い姿を見せてくれる。

井伊といえば直弼。13代藩主の14男に生まれ、庶子であり養子の口もない。17歳から15年間、わずかな扶持をあてがわれ質素な家で過ごす。世に出ることのない若隠居暮らし。直弼は自らを、埋もれ木にたとえた。それでも、なすべきことはあると精進した。「世の中を よそに見つつも うもれ木の 埋もれておらむ 心なき身は」。茶、和歌、鼓や槍・砲術に通じ、国学を学び深く傾倒する。

人の運命は分からない。兄である藩主の世継ぎが死去し、急きょ養子となる。運命に導かれるように、直弼が歴史の表舞台に登場。世は幕末の動乱期を迎えていた。将軍後継と日米修好通商条約をめぐり対立が激しくなる中、大老に就く。英明の誉れ高い一橋慶喜を排し、紀州慶福を将軍に。アヘン戦争で欧米に蚕食される清を見て、「国を開き 富を蓄え 兵を養う」ことを国の指針とした。朝廷の反対を押し切り条約を調印する。

攘夷派が反発し大騒動に発展。直弼の目に国家転覆の動きと映る。吉田松陰らを死罪、一橋父子らを蟄居、老中を免職。安政の大獄だ。埋もれ木で果てるはずの我が身。徳川を守るためなら赤鬼にもなり、命も天に預ける気迫。直弼は恐嗟の的となり、雪の桜田門に散る。

結局、攘夷派は開国へ転ずる。しかも欧米の文明にひれふすように、せっせと文物を取り入れる。直弼は国に殉じ、近代化の道を開いた。だが、幕府は冷たい。政治の混乱を直弼に押しつけ10万石を没収。譜代筆頭井伊家は、この遺恨もあり、戊辰の役でためらわず新政府側につく。

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