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市長の手控え帖 No.35「ローカルは新しい」

市長の手控え帖


国の復興構想会議から「悲惨のなかの希望」と題する提言がなされました。ここに「自然の脅威と人類の驕りの前に、現代文明の弱さが露呈した。文明そのものが問われている」とあります。経済成長で国を富まし、生活を豊かにする。生産量の大きさ=幸せの大きさとし、社会のシステムをこれに合わせ、科学技術の力を結集してきた。間違ってはいないが、偏りすぎた。結果として、自然環境は悪化し、文化やコミュニティが壊れ、災害には脆い社会となった。未来に新たな道筋をつけていくことが今求められています。大きくいえば、巨大・集中から小型・分散、グローバルからローカルへ。
その象徴としてエネルギーとの向きあい方があります。豆腐の上に乗っているような列島に54基の原発は危険、しかも核制御の技術はいまだ持っていない。古いものから順次廃炉にし、国の強い意志と明確な政策により自然エネルギーに転換することが時代の要請です。切羽詰まれば思いもよらない力を出すのが人間、必ずできます。日本は多様な地形や気象に富んでいる。日照に恵まれた地には太陽光、強い風には風力、温泉地帯には地熱、森林にはバイオマス。いずれも地域の特性をいかしたヒューマンな電気や熱です。生活する地域がクリーンで無尽蔵のエネルギーの舞台になり、発電や蓄電事業から雇用が生まれる。エネルギーの地産地消と産業化は地域を大きく変えると思います。エネルギーの小型化・分散化は、首都機能移転や地方分権とも重なり合い、国のいびつな姿を修正するとともに、あらゆるリスクからの回避や分散にもなります。そして、このことが歴史や風土をいかした地方の再生につながり、新たな日本の国づくりの指針になると思います。

もうひとつはローカルの持つ意味です。私たちはとてつもない大都市、どこのものとも分からないヨコ文字の銀行、城塞のような発電所をつくってきました。巨大や集中はある点までは合理的。でも度を過ぎると重荷になり害をもたらす。グローバルは避けられないとはいうものの、より競争は激しくなり、心は落ち着かない。足元を見れば生活の基盤が空洞化している。誰もがこれでいいのか、疑問を持っている。一方で、昭和30年代頃の街並みや暮らしを描いた映画や催しものが人気。懐かしさ、ほっとした気持ちにひたれるからでしょうか。貧しさの中に明るさがあり、共同体の一員として支えられ、守られている安らぎがある。まちなかには商店が揃い、冠婚葬祭や茶飲み話によるコミュニティが息づく。これが災害など危機の時には、救いのオアシスになります。豊かになるにつれ、まちなかはシャッター通りになり、農村は過疎化に悩む。これを“豊か”といい“発展”というのでしょうか。共同体を壊してどこに安住の場所を求めるのでしょう。 今、「この道を歩き続けていいのか」を日本人は考えています。勿論、恒心を保つには一定の豊かさは欠かせない。と同時に、地域とのかかわりや心の安定も大事です。長島や大鵬の時代を、歴史の一コマとして懐かしむのではなく、あの頃のような人間と生活・生業が分離しない社会をつくる努力が求められています。自然の摂理に反する行いは行き詰る。自然の法則の中で、謙虚に生を営むことが文明を変えていくのだと思います。ローカルは、生活を守り、穏やかで落ち着きがある。ローカルこそ新しい。大震災は、ローカルを先端の思想に押し上げるような気がします。

惨禍をもたらしている原発も、ようやく冷温化に向けた条件が揃ったようです。冷温停止の作業が順調に進むことを祈る思いで見つめています。しかし、停止しても地表に降りた放射性物質の除去、健康調査等の対策はこれからが山場であり、風評被害との戦いは長く苦しいものになりそうです。
また、被災者や避難者への支援は多岐にわたり、行政のきめ細かな対応が求められます。すでに工事に入っていますが、公共災害の復旧も急がねばなりません。
県全体に明るいことがない中、白河ではヨークベニマル、中町に楽蔵、商工会議所が相次いでオープンしました。また、先月末には待望の図書館がオープンし、延期されていたヤフーのデータセンターも近々着工されることになりました。災害で数か月遅れましたが、間違いなく発展への確かな足取りを刻んでいます。

この度、皆様の信任を戴き再び市政を担当することになりました。かってない難局です。皆様と手を取り合って、白河から希望の灯を高く揚げていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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