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市長の手控え帖 No.203「後味の悪いW杯」

サッカーワールドカップが終わった。決勝戦はスペイン対アルゼンチン。19年前。アルゼンチンのスター、メッシが今やスペインの主力となった赤ん坊のヤマルを抱いている写真もあり、世界は沸いた。サッカーは世界で最も人気のあるスポーツ。国境・言語・宗教の壁を乗り越え「世界の共通言語」ともいわれる。

ボール1つあればどこでもできる。経済力の差は実力に反映しない。中国、ロシアは低レベル、米国も存在感が薄い。ブラジルのスラム街などで、ひたすらボールを追う少年たちからスターが出る。初出場ながら決勝に進出した西アフリカのカーボベルデ。人口53万の島国の活躍に胸躍らせた。この国は日本の遠洋マグロ漁の寄港地だった。親日的な国民は"最高だよ~最高だよ"と陽気に歌う。

世界的スポーツ大会には、2つの影が付きまとう。商業主義と政治の介入。今大会はそれが露骨だった。国際サッカー連盟(FIFA)加入の団体、多くのサッカーファンも抗議の声を上げた。だがそれを意に介さない人物の振る舞いにより、実に後味の悪いものになってしまった。

 

今回からチーム数は32から48に増えた。入場券価格も需給に応じて変動する方式を導入。価格の高騰は著しく決勝では3百万、闇では9百万もしたとか!卑しいほどの商業主義。派手な演出。ハーフタイムは15分と決められているのに、倍も費やされた。飲水タイムの導入もCMに利用された。いずれも放映権料アップを狙った、との疑念が出ている。

一方、選手の技量は上がり、プレースピードや当たりは増している。試合数の増加で、消耗度は大きいのにもかかわらず、決勝では中3日、時には2日と超過密。しかし、特段選手の疲労や負傷への配慮はなされなかったように思う。

スポーツクラブは欧州の「最大多数の最大幸福」の下、地域社会のために設立された。だが第二次大戦後、米国の市場主義の影響で産業化される。FIFAは1998年大会までは、割安で公共放送に売っていたが、放映権料拡大のため、翌大会から競争入札に切り替えた。

収入源はチケットから巨額の放映権料にシフトした。加えて、中国やサウジアラビアなど金に糸目を付けない国が政治、経済力を背景に台頭してくる。今や世界的スポーツは功利主義的なものでなく、巨大資本と国家が関与する複雑なゲームになってしまった。感動や情熱のスポーツ精神は駆逐されてしまうのだろうか。

 

政治との関係も目に余った。昨年11月、FIFAが「平和賞」を創設。「不安定で分断された世界で紛争を終わらせ、平和の精神に基づいて尽力する人の貢献」を顕彰するもの。贈られたのはトランプ大統領!権力者への見え透いたごますり。FIFAの幹部も知らないうちに決まったという。会長の専横に呆れる。

大会の政治利用は事前から懸念されていた。案の定、移民・犯罪対策に反発する都市での開催を中止することを示唆。イラン選手の行動を制限し、一部関係者は入国を拒まれた。さらにトランプは米国選手のレッドカードに伴う出場停止をめぐり、会長に処分見直しを求めた。即、処分執行の1年間猶予が決まった!

欧州サッカー連盟などは「一線を越えた」と猛反発したが、彼らはどこ吹く風。米建国の父たちは権力の抑制に心血を注いだが「国王」風に振る舞う大統領は、自分を制限するのは自分のみと公言する。ディール以外の言葉を知らない人物に最大の権力を与えたことを憂える。

決勝後、表彰式に向かって歩く2人にブーイングが浴びせられた。これが今大会の全てを物語っている。政治介入を当然とするかのような大統領。さらに参加チームを増やし、利益を上げようと目論む会長。サッカーは地域の心を繫ぐ公共財。錬金術の道具にしてはならない。

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